ではコンピュータとは何かの解を探るために、コンピュータの計算過程をシミュレーションしてみましょう
学校の教室を想像してください。
講師が前に立ち、30人くらいの受講者が席を並べているとします。その講師が私、30人の受講者の1人がみなさんという想定です。
コンピュータが得意とする計算を少々やってみましょう。このシミュレーションではみなさんの頭脳が狭義のコンピュータ、つまりCPUとメモリです。
「5たす3は?」
CPUとメモリの代わりにみなさんの頭脳を使って、即座に解答が出たと思います。そして、それはまちがいなく正解でしょう。
では、次はいかがでしょう。
「・・たす6は?」
「・・」の部分は、みなさんの前にいる私が、小さな声でゴニョゴニョと言ったとか、黒板に読めないくらいの小さな字で書いたとしてください。
問題をちゃんと出さければ解答できるわけがない、早く問題を出せとみなさんはお思いでしょう。(それより、くだらんことをしてないで早く本論に入れとお怒りでしょうか。すぐに本題に入りますからご辛抱を)
これをコンピュータ的に解釈しますと、「問題の入力(input、インプット)が正しくなされてないのでコンピュータは計算できない」となります。
厳格な石頭のコンピュータという機械に計算してもらおうとするなら、問題(今の場合数)を正確に入力する必要があるとご理解ください。
現在のパソコンにおいては、入力装置の主流は、マウスとキーボードです。請求書の紙をパソコンの前に差し出しただけでは希望する計算をしてもらえないのは、紙の表面に書かれた数から意味のあるものを選りわけコンピュータ内部に入力する術がないからです。
1980年代初頭、煩わしい事務処理に時間をとられていたある小規模スーパーの店長から、こんなことを言われたことがありました。「この紙(請求書)の束を差し出すだけで計算してくれるなら、コンピュータを導入してやってもいいよ。」
どんな問題であれ処理であれ、マウスやキーボード他の入力装置を介して使用中のコンピュータのルールに従い正しく入力しなければ始まりません。このことをまずはっきり認識していただきました。
ちなみに21世紀初頭の現代のスーパーでは、POS(ポス)システムにより、販売時点で商品名や価格をコンピュータに入力してしまい、紙の束を読み取るより、紙自体を減らす方向で処理が進められています。おそらくご存じとは思いますが。
話を戻して、では次の問題はいかがでしょう。
やはり30人の受講者を前に私が口頭で問題を読み上げたと想定してください。
「ごひゃくはちじゅうさんまんにせんよんひゃくきゅうじゅうご(5,832,495)たすじゅうはちまんごせんにひゃくごじゅうよん(185,254)は?」
通常の普及版電卓は8桁ありますので、コンピュータを使うまでもなく電卓を使うだけで誰でも余裕で計算できる問題でしょう。数を聞きとりながら即計算。で、コンピュータの代わりを務めていただいているみなさんの頭脳ではいかがでしたか。
できない人が大多数でしょう。
何故これが計算できないのでしょう。聞いた時点で数字の入力はおそらくできたでしょうが、すべての位の計算をし全桁の答えを求めるまでの間、すべての数を記憶し続けることができなかったということのようです。7桁と6桁の数字を一度聞いただけでしっかり記憶できる人ならばおそらく解ける問題です。
ここでわかったことは「正確に入力した上でその内容を正しく記憶」しておかないと計算できないということです。
さらにもう1問続けます。
「584かける915は?」
さてこれまた特別に訓練された方は別ですが、普通の人は暗算では解けません。何故でしょう。
3桁の数字2個、計6桁の数ですから入力と記憶は問題なくできたと思います。それでも計算できない。
理由をコンピュータ的に解釈するならば、計算過程で発生した数字をすべて記憶しておくことができないから、最終結果を計算できない、となります。
でも現実には紙に書いて計算するとできますよね。これも重要なポイントです。ご自分の脳だけでは記憶しきれないものは、紙に書く、つまり別のところに記憶すればよいわけです。みなさん小学校のときからそういう訓練を受けてきています。暗算でできなかったら筆算で解け、と。
これをコンピュータ的に解釈すれば、記憶装置からあふれた情報は別のところに記憶する、となります。この別の記憶するところを「外部記憶」とか「補助記憶」とよびます。
外部記憶とか補助記憶に対し、みなさまの頭脳のように通常使う記憶の中心部分は「主記憶」と呼びます。カタカナ語では「メインメモリ」です。
ここまでのことをまとめますと、
「正確に入力した上でその内容を正しく記憶し、さらにその計算過程をすべて記憶しないと計算できない」となります。
さてこまかく計算の過程を考察してきましたが、実はここまでは計算のことにはふれずに数の記憶の問題だけをとりあげてきました。ここからいよいよコンピュータの本領発揮、計算の本質にせまります。
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